Guest Profile
里見 治(さとみ・はじめ)
1942年群馬県生まれ。青山学院大学法学部中退。75年、サミー工業株式会社(現サミー株式会社)設立。80年、代表取締役社長に就任。2003年、株式会社セガ特別顧問就任。04年セガサミーホールディングス株式会社設立、代表取締役会長兼社長就任、現在に至る。そのほか、株式会社セガ代表取締役会長、フェニックスリゾート株式会社取締役会長、サミー株式会社代表取締役会長CEO、社団法人日本アミューズメントマシン工業会会長なども務めている。
特集大当たりを狙う人、のんびりじっくり楽しみたい人…。ファン層の呼び戻しには、タイプの異なる機種や遊び方の提案が重要だ。
1.パチンコ・パチスロからも足が遠のく若者たち
2.キャラクターに頼った機種だけではダメシニアにも若者にも魅力ある遊技台を
3.業界の活性化を取り戻すためにも規制緩和を促す取り組みが必要
4.カジノとパチンコは競合しない!IRビジネス参入を目指す
1.パチンコ・パチスロからも足が遠のく若者たち
パチンコ・パチスロの利用者が減少傾向で推移していることには大きな危機感を持っている。パチンコとパチスロ機械の設置台数は横ばいであるものの、ホール軒数は緩やかな減少傾向で推移している。大手のホール企業が大型店を出店することで設置台数の落ち込みをどうにかカバーしているのが現状であり、先行きは決して楽観できるものではない。
国内の少子高齢化はもちろん、若者のパチンコ離れが深刻な問題といわれている。
遊びの多様化が急速に進んできたという背景もあるだろう。とくに携帯電話からスマートフォンに移行する過程で、ゲームアプリ市場が急速に拡大を示している。若者世代に受け入れられている証拠だ。若者世代に対して、多くの娯楽のなかから選択してもらえ、実際に足を運んでもらえるように魅力を訴求し、存在感を高めることが、遊技機業界の今後の維持、発展にはとても必要である。
2.キャラクターに頼った機種だけではダメシニアにも若者にも魅力ある遊技台を
若者層の獲得はもちろん、ファンのすそ野を広げていくためは、とにかく魅力ある遊技機の開発にかかっていると考えている。わかりやすい例でいえば、人気のあるアニメキャラクターやタレントなどを使った遊技機がそうだろう。しかし、見過ごしてならないのが、遊技機そのもののスペックも重要だということ。大当たりを狙う人もいれば、空いた時間つぶしのために少ないお金で長く遊べるほうがいいという人もいる。こうしたさまざまなニーズを取り込むためにも「ハイスペック」、「ミドルスペック」、「ロースペック」といったようにさまざまな機種で多様化を図ることも大切だ。とはいえ、「1円パチンコ」を増やせばいいというものでもない。1円パチンコは新しいファンを獲得するための手段としては有効である。しかし、当然4円パチンコに比べ、売上げ、利益面では効率が悪いので、全体の20%程度の設置台数に抑えないと、パチンコホールの経営に支障を来すことになる。
とにかく、遊技機の魅力を高めていくことが重要だ。ファン層をいかにして楽しませ飽きさせないように、多様な機種や遊び方を提案していくことがパチンコ離れ解決への第一歩になるのではないか。
たとえばパチンコとパチスロを比較すると、パチスロは3列で回っているそれぞれのリールを自分で止められるため、自らの意思で遊んでいる感覚が味わいやすいのに比べ、パチンコの場合はどうしても台任せのようなところがある。しかし、最近はボタンを押したり、キャラクターが動き出したりと、遊技機を操作しながら楽しめる機種が中心になり、特に人気のキャラクターが登場する機種は多くのファンを獲得している。
今後、パチンコ業界が業績を伸ばしていくには、若者にとって魅力のある遊技機と、長らく親しんでいただいているファンに支持される遊技機をいかにしてバランスよく提供していくかがカギになるのではないか。
3.業界の活性化を取り戻すためにも規制緩和を促す取り組みが必要
パチンコ産業には、たくさんの規制が存在する。俗にいう「風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)」がその代表的なものだ。安倍政権が推進する「アベノミクス」の3本目の矢である「成長戦略」において産業や市場を活性化するための規制緩和が検討されている。現状、パチンコホールに卸す遊技機というものには数多くの規制と検査がある。
このまま何も手を打たなければ、現在、約19兆円の市場規模、約1万2000店舗のパチンコホール軒数は、さらに縮小していくという危機感を持っている。遊技機メーカー団体を束ねる立場として、ファンの期待に応え、業界の活気を取り戻すためにも、適度な射幸心とバラエティ豊かな遊技性を兼ね備える魅力的な遊技機が開発できるよう規制緩和を促す取り組みは継続していくつもりだ。
4.カジノとパチンコは競合しない!IRビジネス参入を目指す
第2次安倍政権のもとでカジノ構想が再び注目されるようになった。マカオやシンガポールにおける成功事例もあり、日本の観光業の発展、そして経済活性化、雇用の確保などさまざまなメリットがあると考える。当然、法案成立に向けては多様な観点から慎重な議論が必要だと考えるが、課題を克服したうえで日本でカジノが解禁されれば、当社としてもぜひ参画していきたい。その際にはカジノの遊技機も作るし、オペレーションも手がけていきたいと考えている。そのときのために、われわれは先行して韓国のパラダイス社と共同で、韓国仁川国際空港隣接エリアにおけるカジノを含む複合施設の開発プロジェクトを進めている。
カジノの話をすると、よくパチンコとの競合の可能性について聞かれるが、今後議論されていくカジノ構想は、ホテル、エンターテインメント、物販、飲食、カジノが複合的な施設として運営されていくIR(統合型リゾート:Integrate Resort)だ。そういう意味では、カジノとパチンコは競合するものではない。
これまでパチンコが、公営ギャンブルの競馬、競輪、競艇などとすみ分けされ共存してきたように、カジノとパチンコは別のエンターテイメントとして成立していくだろうし、そうなってほしいと考えている。